
宇都宮美術館(宇都宮市長岡町)で8月24日、美術講座「役に立つ! アート鑑賞の可能性-美術教育・ビジネス・医学教育の現場から」が開催された。
講師を務めたのは、心理学の視点からアートの学びや創造を研究する縣拓充さん(教育心理学、認知科学、千葉大学大学院国際学術研究院准教授)、美術ファンやビジネスパーソン向けに鑑賞講座を展開する佐藤悠さん(アーティスト・鑑賞プログラマー)、医学教育に対話型鑑賞を取り入れている森永康平さん(内科医師、獨協医科大学非常勤講師、ミルキク代表)の3人。
森永さんは医学教育に取り入れている対話型アート鑑賞の実践例を用いて紹介。佐藤さんは「自由に見るのではなく、あえて制約や障害を設ける」鑑賞プログラムを取り上げ、縣さんは研究プロジェクト「ななめ大学」というプログラムを用い、アーティストを含めたさまざまな人がそれぞれの視点を持ち寄り、互いに触発し合えるような学びのプラットフォームを構築する取り組みを例に、アート鑑賞による効果や変容をスクリーンで紹介した。
希望者を対象に、森永さん、佐藤さんによる鑑賞体験も実施。「鑑賞時間を10倍にするカード」を使った佐藤さんの鑑賞体験では、カードに書かれた記憶や経験にまつわるテーマに沿って実際の作品を鑑賞し、参加者同士が考えを共有した。
体験に参加した鈴木智子さんは「こういう機会がないと、これだけの時間をかけて作品を見ることがなく、通り過ぎていた。作品の見方を教えてもらった」と話す。
宇都宮美術館主任学芸員の小堀修司さんは「アートは役に立たないと言われがちだが、日々の生活を豊かにし、見直されてきている。アートは暮らしや仕事の中でも役立つことを分かっていただけたら」と話す。