「第8回日本拓版画会展 栃木県で独自に発展する拓版画の現在」が1月8日~12日、栃木県総合文化センター(宇都宮市本町)第1ギャラリーで開催された。主催は日本拓版画会。
会場には会員の作品を中心に、はがきサイズから油絵の30号サイズまでの作品約60点を展示した。
通常の版画での刷りは版面に直接インクをつけ、圧力を加えることによって紙に転写するが、拓版画は、版面に直接インクをつけることはせず、版に押し当てた紙にタンポで画材を押し付けるため、図像が反転せず、凹凸がきれいに出るのが特徴。
1906(明治39)年、栃木県益子町で生まれた笹島喜平さんが、拓摺りの技法を自ら生み出し発展させてきた。笹島さんの弟子にあたり、同会会長の坂本富男さんは「もともと油絵をやっていたが、拓版画の油絵のゴッホのようなタッチが紙に写し出されるのに魅力を感じて始めた」と振り返る。
墨を使った白黒の刷りが基本だが、それでも水彩を使ったり、色鉛筆を使ったりと、いろいろな画材が使える。今回カラフルに塗り分け多色刷りの作品を展示している臼田ひとみさんは2015(平成27)年に坂本さんの個展を訪れた際、拓版画の魅力に引かれ「拓版画をやってみたい」とその場で坂本さんに声をかけ拓版画を始め、今では個展も開くほどになった。
坂本さんは「原初的な版画手法だがまだまだ知らない方が多いので、もっと広まって、ゆくゆくは栃木県の文化資産になれば」と意気込む。