
大阪を拠点とする劇作家・演出家の久野那美さんの作品上演ユニット「階(かい)」の「それは満月のことでした」が7月26日・27日、アトリエほんまる(宇都宮市本丸町)で上演される。栃木県初公演となる。
「階」は公演の都度、参加者を募り、その度に「○○の階」というユニット名を更新する演劇ユニットで、今回は「途の階(みちのかい)。毎回公演終了後に解散する。上演会場を劇中に取り込み、虚構と現実、客席と舞台、劇の中と外の境界を越境して広がっていく作品作りが特徴で、上演会場や劇場の使い方も毎回話題になる。
拠点は大阪だが、最近では2021年の埼玉公演、2022年の東京都調布市のせんがわ劇場コンクールでのグランプリ受賞と翌年の受賞公演、2024年の大阪・東京の2都市ツアーなど、関西圏外でのツアーも積極的に行っている。
主宰で作・演出を務める久野さんは「言葉にできる一番すてきなことは、うそをつくこと」をモットーに日常と非日常の混在する会話劇を創る劇作家で、詩的で美しいせりふと、見た人によって受け取り方の異なる多面体の物語世界に定評があるとされる。戯曲は、全国の高校演劇大会や学生劇団、アマチュア劇団などにより、毎年数多く上演されている。
今回の栃木公演は、東京、大阪以外での新しい地域で、「未知の観客と出会いたい」という久野さんの思いと、今回一人芝居を演じる俳優、七井悠(なないはるか)さんが栃木県出身であることから、七井さんの出身地である栃木での公演が実現した。
七井さんは宇都宮東高演劇部時代に演劇を始め、京都の大学時代や卒業後も、関西の小劇場で俳優として活躍しており、独特の演技体と特徴的な声を持ち備えた俳優。金満里さんが主宰する身体障害者のみで構成される劇団「態変」で演出助手やスタッフをしているなど活躍は多岐にわたる。
今回の作品は七井さんの40分の一人芝居。俳優一人、音響、照明が同じ比重で表現を行うことで、「演劇」という表現の可能性を探り、音、明かり、劇場の存在感など、「俳優の表現」以外の演劇の表現も楽しめる作品になるという。久野さんは「大阪で好評だった作品。ぜひ、栃木の人にも見てほしい。いろいろな見方のできる作品なので、自分流の解釈で楽しんでもらえたら」と観劇を呼びかける。
開演は、26日=14時・18時、27日=11時・14時。料金は、一般=2,500円、中高校生以下=1,000 円。