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頂点に立ちながらも業界の変革に取り組み続けるフォトグラファー

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 宇都宮市郊外にひっそりと立つ「伊東写真館」(宇都宮市下岡本)。1953(昭和28)年創業の父の家業を大学時代から手伝い、2010(平成22)年に引き継いだ店主の伊東一平さんはさまざまな賞を受賞しながらも、2023年に「第16回日本写真館大賞・経済産業大臣賞」を受賞。その後は講演会の講師として呼ばれることも多く、学校行事や撮影スケジュールの合間を見ながら、全国各地を走り回る。

(さまざまな賞を受賞)

 

 2024年に立ち上がった「Japan Photo Meister Club(ジャパン・フォト・マイスター・クラブ)」は「一級写真技能士」の資格を持ち、「個人情報保護の認定」を受けていることが条件。同クラブは独自の評価システムにより技術、実績、経営内容、人格などを総合評価し、全国の「最高評価のフォトグラファー」として称する制度で、伊東さんも全国23人のうちの一人となった。伊東さんは「『一億総カメラマン時代』となり、誰でもプロカメラマンを名乗れる時代になってしまった昨今、この賞をもらえたことはうれしい。私でも写真を学び続けなければ、この称号を名乗ることはできない仕組みなので、今後も維持できるよう頑張りたい。僕のような人間は一度賞を取ると満足して勘違いをしてしまうので、魅力的な仕組みなのかも」と笑顔で語る。
 
(ジャパン・フォト・マイスター・クラブへの招待状を手にした伊東さん)


 
 称号を維持するためには、3年以内に、全国クラスのコンテストで入賞を続けなければ、称号が剥奪されてしまうという。この称号を維持するため、伊東さんは「常に外出して多くの刺激を受け、感性を研ぎ澄ませている。目の前にあるもの全てがモチーフとなり、ちょっとした雰囲気の変化を感じることが大切。最近、自宅に居るときは俳優などの写真集を買い込み、眺めながら過ごす」と話す。
 
(仲間との登山山頂で)撮影=堀江則行

 

 伊東さんの事業領域は、写真館2階で撮影する「スタジオフォト」、学校の卒業アルバムを撮影する「スクールフォト」、住宅のモデルハウスやレストランのメニュー撮影などの「コマーシャルフォト」、演奏会などの「コンサートフォト」など幅広い。

(スポーツフォト撮影の様子)

 

 最近、伊東さんが気になるのが「卒業アルバム」。アルバムに掲載された写真がAIで加工され、SNSで拡散されるケースやアルバム制作の関連会社がサイバー攻撃を受ける被害も生じている。2013(平成25)年、個人情報保護を目的とした自主的な資格認定制度「フォト・セキュリティー・マイスター・システム(PSMS)」が導入され、伊東さん自身も取得。現在は協同組合日本写真館協会の学校事業部長を務め、講習会の講師を務めているという。

(講演の様子)

 

 さらにこのような社会の動きに耐えきれず、伊東さんは2023年7月に「学校写真フォーラム」という組織を立ち上げた。「学校写真」を正しく理解してもらおうと、今年10月ごろに、幼稚園、小中高校、大学・専門学校などの学校関係者に冊子の配布を始めるという。伊東さんは「学校の卒業アルバムは、学校行事とともに子どもの成長の過程が分かり、仲間との楽しい思い出が詰まったもの。卒業アルバムは不要で廃止すべきなど偏ったニュースに惑わされずに、学校と生徒、そして保護者が一緒になって考えていかなければいけない」と強く語る。

(学校での活動)

 

 社会全般の問題に「写真」を通じて解決していきたい取り組みがあるという。この一つに「子どもの記録を撮り続け、部屋のあちこちに写真を飾っておくことは、子どもの肯定感を高めることにつながる。この活動も広げていきたい」と語りに熱がこもる。
 

▼外部リンク
https://itoippei.com/


▼住所
伊東写真館
宇都宮市下岡本町4533-18

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