
フランク・ロイド・ライトが栃木に残したものとして「大谷(おおや)石文化の魅力発信を考える」シンポジウムが2月7日、宇都宮共和大学(宇都宮市大通り1)で開催された。
1923(大正12)年、ライトは帝国ホテル(東京都千代田区)を設計し、石材から調度品に使う木材の選定に至るまで徹底した管理体制で建築した。この玄関部分の石材として大谷石が採用され、この玄関部分は博物館明治村(愛知県犬山市)に移築再建されている。
今回、同大都市経済研究センターが、日本の近代建築や大谷石の活用についてライトが残した足跡と意義を県民に広く伝えることを目的に主催。当日は経済界や文化界から約200人が参加した。
兵庫県立大学教授の水上優さんは「フランク・ロイド・ライトと日本」と題して基調講演を行い、「大地性・神性を感じさせ、視覚的にも触覚的にも人間に働きかけてくる大谷石は、日本で産出される素材の中で、有機的建築の空間で力を非常に強く持っている点をライトは見ていた」とした。新素材研究所所長の榊田倫之さんは講演で、「ライトが栃木に残したもの」として、「石の存在感、土の多孔質な表面、木の経年変化性を持ち合わせているのが大谷石」とした。
その後のパネルディスカッションでは、近代建築・デザイン史家の橋本優子さん、宇都宮大学名誉教授の三橋伸夫さん、栃木県文化協会会長の中津正修さんが、それぞれの立場から、栃木県が計画する「文化と知の拠点」への期待や具体的な方策提案の意見を述べた。
同大の須賀英之学長は「これから7年後、県立美術館、図書館、文書館の一体的な建て替えが行われる。今回のシンポジウムが、フランク・ロイド・ライトと大谷石の展示スペース設置を検討する契機になれば」と期待を込める。
パネリストを務めた三橋さんは「良いものがあっても発信していくことがうまくない県民性。この『文化と知の拠点』が県民のかたぎを変えるきっかけになれば」と話す。